映画『ウィキッド ふたりの魔女』は、
長い上映時間にもかかわらず、物語の途中で終わります。
続編へとつながる構成のため、
観終えたあとも、登場人物の選択が頭に残り続けます。
なかでも強い印象を残すのが、エルファバです。
彼女はなぜ嫌われ、恐れられ、
やがて「悪い魔女」と呼ばれるようになったのでしょうか。
物語を追うほどに見えてくるのは、
特別な運命だけでは説明できない理由でした。
人はときに、周囲を変えてしまう存在に不安を抱きます。
この記事では、エルファバの具体的な行動をたどりながら、
その姿がなぜ人を動かし、恐れられる存在になっていくのかを読み解きます。
※本記事はネタバレを含みます。
まず全体を整理しておきたい方はこちら。
▶ウィキッド、あらすじで即わかる「ふたりの魔女」の見どころ。善と悪は誰が決める?
映画『ウィキッド』エルファバは、なぜ嫌われた?
「安心できない」態度が距離を生んだ
エルファバは、生まれたときから異質な存在でした。
けれど、彼女が周囲から距離を置かれた理由は、
見た目だけではありません。
むしろ印象に残るのは、その態度です。
彼女は自分を隠しません。
同情も求めません。遠慮もしない。
誰かに合わせるより、
自分が正しいと思う行動を選びます。
その姿は、強く見えます。
同時に、近づきにくい。
人は、どう接していいか分からない相手に出会うと、
少し距離を取ります。
悪意があるわけではありません。
ただ、安心できないのです。
エルファバの周囲に流れている空気は、
その「安心できなさ」だったのではないでしょうか。
遠慮しない正しさが周囲を緊張させる
エルファバは、もともと学校に入る予定ではありませんでした。
妹ネッサローズの付き添いとして訪れただけです。
ところが、偶然発揮した魔法が認められ、
本人の意思とは関係なく入学が決まります。
グリンダと同室になったときも、
彼女は空気を読みません。
グリンダに押し込められた、
最低限の場所に甘んじるのではなく、
自分の居場所を広げようとします。
相手の反応を確かめながら距離を縮める。
そうした段階を飛ばしてしまう。
正しさを優先する人は、
ときに周囲を緊張させます。
次に何をするのか予測できないからです。
安心できる人とは、
ある程度のパターンを持つ人です。
エルファバは、その枠に入りません。
「正しい人」は、なぜ嫌われるのか
エルファバは不正や不条理を見過ごしません。
違和感を覚えた瞬間に行動します。
ディラモンド先生が追い詰められていく場面でも、
周囲が戸惑う中、
エルファバは迷うことなく声をあげます。
「おかしい」と抗議する。
その速さは、
理想の強さでもあり、
同時に周囲を置き去りにする力でもあります。
多くの人は、
正しいかどうかよりも、
周囲との関係を保つことを優先します。
エルファバは違います。
そのため、
尊敬より先に警戒が生まれる。
この段階では、
彼女はまだ「恐れられている」わけではありません。
扱いづらい人。
距離を取りたい人。
しかし物語が進むにつれて、
その評価は大きく変わっていきます。
映画『ウィキッド』人を変える経験が転機になる
帽子が意味したもの
グリンダがエルファバに帽子を渡したのは、
悪意から始まったものでした。
からかうつもりだった。
笑いを取るための、軽い行為です。
けれど、エルファバにとっては違いました。
誰かが自分に「似合う」といって選んでくれた。
それは、
おそらく人生で初めての出来事だったのではないでしょうか。
彼女は、その帽子を本気で受け取ります。
この感覚のずれが、
後の出来事につながっていきます。
笑われても外さなかった理由
エルファバは、
その帽子をかぶってダンスホールへ向かいます。
そこにあったのは、
歓迎ではありませんでした。
ざわめき。
視線。
笑い。
そんな悪意ある視線の中で、彼女は帽子をかぶります。
グリンダがくれたものだから。
自分が嬉しかったから。
周囲の反応とは関係なく、
その気持ちを大切にする。
その姿は、
強がりでも反抗でもありません。
ただ、自分の意思を尊重し続けているだけです。
私はこの場面で、
本当に胸が詰まりました。
人にどう思われるかよりも、
自分の意思を貫く。
エルファバは、なんて強いのかと思いました。
グリンダが変わった理由
そんなエルファバを見て、
グリンダは自分がしたことの意味に気づきます。
あの帽子は、
からかいでは終わらなかった。
エルファバは本気で信じていた。
その信頼を裏切っていた。
その少し前、エルファバが自分のために
行動してくれたことも知りました。
魔法のレッスンを受けられるよう、
先生に掛け合ってくれたのです。
その事実が、グリンダの中の価値観を揺らします。
彼女は、エルファバの隣で
へんてこなダンスを踊り始めます。
言葉はありません。
それでも、その行動は、
周囲の空気を変えていきます。
この出来事は、
エルファバにとっても決定的でした。
人は変わることがある。
行動は、誰かを動かすことがある。
この経験が、
後の選択へとつながっていきます。
映画『ウィキッド』オズの「恐れ」へ変わる転換点
オズが恐れたのは「従わない」こと
オズの宮殿で起きた出来事は、
エルファバの人生を決定的に変えます。
彼女は、
与えられた魔導書を瞬時に読み解きます。
そして、命令に従う形で、
サルたちに羽を生やしてしまいます。
それは偶然でも奇跡でもありません。
圧倒的な才能でした。
その力を見て、オズは喜びます。
長年求めていた「本物」を、
ついに手に入れたと思ったからでしょう。
しかし、
その空気はすぐに変わります。
エルファバは気づいてしまいます。
この魔法が、
自由ではなく支配のために使われようとしていることに。
そして彼女は拒否します。
従うことを選ばなかった瞬間、歓迎は恐れへと変わります。
オズにとって問題だったのは、力そのものではありません。
その力が、自分の手の中に収まらないことでした。
偽物のオズと本物のエルファバ
オズは、
民衆に希望を与える存在として振る舞っています。
けれど実際には、自分では魔法を使えません。
象徴としての権威は持っていても、
本当の力は持っていない。
そこに現れたのが、エルファバでした。
演出ではなく、本当に現実を変えてしまう力を持つ存在。
しかし、彼女は従う気がない。
この対比は、
支配者にとって最も恐ろしい状況です。
だからオズは、
彼女を排除するしかありませんでした。
国中に「危険な魔女」として知らせ、
追っ手を差し向ける。
それは単なる敵対ではなく、
恐れから生まれた行動だったのでしょう。
映画『ウィキッド』エルファバが引き受けた孤独
エルファバは、オズの宮殿で追われる立場になったとき、
最初から一人で進む覚悟をしていたわけではありません。
グリンダに向かって
「一緒に来てほしい」と伝えます。
その言葉には、確信に近いものがありました。
二人ならできる。
世界を変えられる。
あのダンスホールでの出来事が、
彼女の中に残っていたからです。
自分の行動が人を動かすことを、
彼女は体験として知っていました。
だから、
グリンダも同じ選択をすると信じていたと思います。
しかし、その願いは叶いません。
グリンダは残ることを選び、
エルファバは一人で進む道を選びます。
ここで彼女は、
孤独を避けることができないと知ります。
それでも前に進む。
一人で進む現実を受け入れる。
エルファバの正義感が、
彼女がやっと手に入れた居場所も友情も手放す決意をさせるのです。
何とも切ない選択です。
まとめ|行動が人を動かす可能性
映画『ウィキッド ふたりの魔女』を追っていくと、
エルファバが嫌われた理由は、
単純な善悪では説明できないことが見えてきます。
彼女は、周囲に合わせることを選びませんでした。
間違っていると思えば声を上げ、
自分の判断で行動します。
その姿は、
安心していた人々の前提を揺らしていきます。
人は、悪い人よりも、
変化をもたらす人に不安を抱くことがあります。
エルファバは、その不安の象徴になりました。
けれど彼女は、
自分の行動が誰かを動かす可能性を知っています。
行動は孤独を深めるだけではなく、
誰かの選択を変えることがあります。
その連なりが、
やがて世界を動かしていく。
映画を観終えたあと、
エルファバの姿が強く残るのは、
彼女の本質が普遍的だからかもしれません。
小さな一歩が、
思いがけず誰かを動かす。
その可能性を、
私たち自身の中にも感じるからだと思うのです。
【補足】映画『ウィキッド』をもっと深く楽しみたい方へ
👉 まず物語を整理したい方へ
▶ あらすじで即わかる「ふたりの魔女」の見どころ。善と悪は誰が決める?

👉 人物関係を知りたい方へ
グリンダやフィエロ、オズとの関係を整理すると、
エルファバの選択の意味がより深く見えてきます。
▶ウィキッドふたりの魔女 考察|続編『永遠の約束』につながる人物関係と伏線

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▶ グリンダはなぜエルファバを選べなかったのか?好かれることの代償

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