ジブリ映画『天空の城ラピュタ』のシータとムスカ大佐。
同じ「ラピュタ王家」の血を引く二人ですが、どうして協力するどころか、まったく違う道を歩むことになってしったのでしょうか。
この記事では、いまから700年前に始まった「ラピュタ王家」の悲しい歴史と、二人の血筋に隠された秘密を分かりやすく解説します。
映画を観ているだけでは気づきにくい、シータの一族とムスカの血筋の分かれ道を一緒に紐解いていきましょう。
天空の城ラピュタ|シータとムスカの本名は?「ラピュタ王家」の秘密
シータとムスカは、同じラピュタ王家の末裔ですが、血筋が違います。
700年前、王家は「本家」と「分家」に分かれました。
自然と共に生きる道を選んだのがシータの一族。
失われた王権に執着したのがムスカの一族でした。
シータの本名:リュシータ・トエル・ウル・ラピュタ
シータの本名は、リュシータ・トエル・ウル・ラピュタ。
劇中でムスカがシータに向かって、「ウルは王、トエルは真……」と語るシーンがあります。つまり、シータの名前は「真のラピュタ王」という意味を持っているのです。
でも、シータが育ったのは、山奥の静かなゴンドアの谷でした。
ヤクを飼い、土にまみれて生きてきた彼女にとって、この名前は威張るためのものではありません。
母やおばあちゃんから「誰にも言っちゃいけない」と大切に引き継がれてきた、お守りのように大切な秘密の名前でした。
ムスカの本名:ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ
ムスカの本名は、ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ。
同じ「ウル(王)」という文字を持ちながらも、ムスカの家系は正統な王位を受け継いだシータの家系とは、決定的な違いがありました。
「ウル」と「パロ」は本家と分家だった?
劇中でムスカ自身が「君の家は本家、私の家は分家」とはっきりと語っています。
地上に降りたとき、ラピュタ王家は2つの血筋に分かれました。
その役割は、驚くほどスッキリと分かれています。
■シータの先祖(ウル・本家):
正統な王の証である「飛行石」と、城を動かす秘密の言葉や、「滅びの呪文(バルス)」を「おまじない」として受け継ぎました。
■ムスカの先祖(パロ・分家):
ラピュタの高度な科学や、戦いの記録が書かれた「古文書(手帳)」を受け継ぎました。
この2つの血筋が、700年後の二人の運命を大きく狂わせていくことになります。
天空の城ラピュタ|なぜ地上へ降りたのか?ラピュタ王家の歴史を考察
ラピュタ文明が滅びた理由
遠いむかし、ラピュタ帝国は恐ろしいほどの科学力と軍事力で、世界を支配していました。しかし今から約700年前、王族たちは住み慣れた天空の城を捨て、地上へ降りることになります。
劇中でムスカは、その理由を「一族の悲劇的な運命」とだけ語っていました。
けれど、宮崎駿監督が描いたラピュタの設定を見ると、その裏には「高度になりすぎた文明の限界」があったようです。
空の上の閉ざされた世界で、ラピュタ人たちは便利すぎる暮らしを続けていました。
ロボットが働き、人間は何不自由なく生きる。
でも、その完璧すぎる文明は、少しずつ人間から「自然と共に生きる力」を奪っていったのかもしれません。
企画書には、ラピュタ人たちが奇病に苦しんでいた設定も残されています。
どれだけ科学が進歩しても、人間は土から離れては生きられない。
そのことに、ラピュタ王家は気づいてしまったのでしょう。
だからシータは、ムスカにこう言います。
「どんなに恐ろしい兵器を持っても、たくさんの可哀想なロボットを操っても、土から離れては生きられないのよ」
この言葉は、ムスカへの反論であると同時に、700年前に滅びへ向かったラピュタ王家そのものへの言葉にも聞こえます。
空を支配した一族は、長い年月の末に「人間は自然の一部でしかない」と知ったのかもしれません。
自然と共に生きたシータの一族
地上に降りたシータの先祖(本家)は、ラピュタの富や権力なんてすっかり忘れて、自然豊かなゴンドアの谷で、素朴な農民として生きる道を選びました。
シータがおばあちゃんから教わった「ゴンドアの谷の歌」にもこんな一節があります。
「土に根を下ろし、風と共に生きよう。種と共に冬を越え、鳥と共に春を歌おう」
どんなに優れた科学があっても、人間は自然(土)から離れては生きていけない。
空の上の閉ざされた世界で生きるより、地に足をつけた暮らしをしよう。
シータの一族は、いわば「自然派」です。
シータが教えてもらった「おまじない」が、物探しや病気を治すといった、命を慈しむものばかりだったのも納得がいきますね。
本家であるシータの祖先たちは、700年かけて、ゆっくりとラピュタ王家の王族から「土と共に生きる人間」に戻っていったのだと思います。
失われた栄光に囚われたムスカの一族
一方で、ムスカの先祖(分家)の歴史は、とても苦しいものだったと想像できます。
「かつて自分たちは世界の支配者だったんだ」という記憶にすがりつき、古文書や記録の解読に力を注いできたのでしょう。
ラピュタ王家の王族として、失った栄光を取り戻したい。
その暗い執念を700年分も引き継いで生まれてきたのが、ムスカという男だったのではないでしょうか。
だからこそ彼は、本家であるシータの血筋に、あそこまで異常な執着を見せたのかもしれませんね。
天空の城ラピュタ|なぜロボット兵はシータを守ったのか?
ロボット兵が守ったのは“本物の王女”だから
かつて空から落ちてきて、政府や将軍たちにラピュタの存在を信じさせるきっかけになったロボット兵。
ずっと要塞の地下で死んだように眠っていたその巨体が、塔に閉じ込められたシータの祈りによって、突然目を覚まします。
このとき、シータはただ、おばあちゃんから教わった「困ったときのおまじない」を自然に口にしただけでした。
「リィテ・ラトバリタ・ウルス・アリアロス・バル・ネトリール」
それが、ラピュタの封印を解く「我を助けよ、光よよみがえれ」という呪文だったのです。
目覚めたロボット兵は、炎に包まれる要塞の中を、ただシータを助け出すためだけに、ひたすら彼女の元へと這い上がってきます。
しかし、シータにはその優しさがわかりません。
恐ろしい鉄の怪物が自分を追いかけてくるのです。ただ必死に逃げ回ります。
それでもロボット兵は、軍の激しい銃撃からその巨体でシータを包み込んで守り抜き、最後は駆けつけたパズーに彼女を託して、自らは炎の中に崩れ落ちていきました。
シータはただ怖くて逃げていただけ。
でも、ロボット兵のプログラムには、正統な王女である「ウルの血筋」がはっきりと見えていたのです。
ラピュタは最後まで王女シータを守りぬいた
ラピュタの城に着いたときも、そこにいたロボット兵はシータを優しく出迎えました。
パズーには目もくれず、そっとシータにお花を差し出すのです。
戦闘だけが仕事じゃない。
ロボット兵にも「心」があると感じられるような、胸が熱くなるシーンでした。
物語のラスト、ムスカの支配を拒んだパズーとシータは、命を捨てる覚悟で
「滅びの言葉=バルス」を叫びます。
その後、崩壊していく城から落ちることなく二人が助かったのは、ラピュタの巨大な木の根が二人を受け止めてくれたからでした。
私はこれを、ただの偶然だとは思いません。
まるで、崩れていくラピュタの城そのものが、正統な王女シータの命を守りぬいたように思えてならないのです。
物語のラスト。
ラピュタが誇る兵器や科学技術はすべて崩れ去りましたが、飛行石の力で、美しい大樹も、庭園も、動物たちも、優しかったロボット兵も、天高く昇っていきました。
1986年に初めて劇場でこの映画を観たとき、透き通るような青空へ消えて行った大樹の姿が、いつまでも胸に残りました。ラピュタの大樹は今も、穏やかに空を飛び続けているような気がします。
まとめ:シータが王家の名を捨てて手に入れたもの
ジブリの名作『天空の城ラピュタ』。
二つに分かれた王家の末裔の一人がムスカです。
彼は、過去の栄光の復活を実現しますが、最後は自滅しました。
もう一方の、正当な王家の末裔がシータです。
彼女は、ラピュタの強大な力がこれ以上災いを起こさないよう、ラピュタを終わらせるために命をかけました。そして、シータの覚悟をすべて受け止めたのがパズーでした。
王女という重い名前を捨てて、一人の女の子に戻ったシータ。
青空の下、地に足をつけるシータの姿に、700年続く王家の呪縛からようやく解放されたんだな、と温かい気持ちになりました。
もう、ウルもパロもありません。
シータは王家の名前を捨てて、地に足のついた暮らしを手に入れたんですね。
ラピュタ王家とは、
「土から離れては生きられない」という真実に、700年かけてたどり着いた一族だったのかもしれません。
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