実写版『はたらく細胞』は、はっきりと評価が分かれる映画です。
「重い」「後半がつらい」「飽きた」そんな声がある一方で、
観終わったあと、
自分の体や生活を見直したという大人も少なくありません。
なぜ、この映画は人によってここまで印象が変わるのでしょうか。
本記事では、実写版『はたらく細胞』の賛否が分かれる理由に焦点を当て、
なぜ一部の大人に深く刺さるのかを読み解いていきます。
『はたらく細胞』実写映画の基本情報
- 作品名:はたらく細胞(実写映画)
- 原作:清水茜『はたらく細胞』/原田重光・初嘉屋一生『はたらく細胞BLACK』(講談社)
- 監督:武内英樹
- 公開年:2024年
- 上映時間:約110分
キャラクター化された細胞たちが体内で働く、という設定はアニメと同じです。
ただし、実写映画である本作には、原作が2種類あります。
『はたらく細胞』と、スピンオフ作品として生まれた『はたらく細胞BLACK』です。
2種類ある原作の違いと、ネタバレなしの感想はこちら。
▶はたらく細胞 実写 評価 ブラック要素が強すぎる?観た人の感想を分類してみた

映画『はたらく細胞』キャラクター&キャスト
体内で働く細胞たち
-
赤血球:永野芽郁
酸素や栄養を運ぶ役割。方向音痴で一生懸命な姿が、体内物流の要として描かれる。 -
白血球(好中球):佐藤健
病原体と最前線で戦う免疫の主力。寡黙でストイックな戦闘スタイルが特徴。 -
血小板:マイカ・ピュ ほか
傷口をふさぎ修復を行う存在。可愛らしい描写だが、重要な止血機能を担う。 -
マクロファージ:松本若菜
病原体の処理だけでなく、現場全体を把握する指揮官的存在。優雅さと冷酷さを併せ持つ。 -
キラーT細胞:山本耕史
感染細胞を直接排除する実行部隊。任務遂行を最優先する姿勢が際立つ。 -
ヘルパーT細胞:染谷将太
免疫の司令塔。状況判断と指示によって、免疫全体のバランスを保つ。 -
NK細胞:仲里依紗
自然免疫の要。感情と免疫活性の関係を象徴する存在として印象的に描かれる。
人間キャラクター
-
漆崎 日胡(にこ):芦田愛菜
健康志向の女子高生。物語の後半で体調を崩す。 -
漆崎 茂:阿部サダヲ
不摂生な生活を続ける父親。体内環境が荒れている大人の象徴的存在。 -
武田 新:加藤清史郎
日胡が慕う先輩。
実写版『はたらく細胞』の賛否が分かれる理由
実写版『はたらく細胞』は、
「思った以上に良かった」という声と
「実写化に違和感がある」「アニメのほうが完成度が高い」という声が分かれる作品です。
この違いは好みというより、
作品のどこに価値を見出すかで印象が変わるためでしょう。
以下では、実写版『はたらく細胞』を評価するうえで重要になる
3つのポイントに絞り、
それぞれについて賛否を整理していきます。
※この先は映画のネタバレを含みます。
未視聴の方はご注意ください。
評価①『はたらく細胞』原作の設定が秀逸
賛:いつの間にか学べてしまう
『はたらく細胞』最大の強みは、
細胞を擬人化した原作マンガの設定そのものが、非常によくできている点です。
白血球、赤血球、血小板といった基本的な細胞から、
NK細胞、キラーT細胞、ヘルパーT細胞など。
それぞれの役割や性質が、
キャラクターの性格や立ち位置として自然に組み込まれています。
説明されなくても、
物語を追っているだけで
「この細胞は何をしているのか」が感覚的にわかります。
“学ばせよう”としないのに、
いつの間にか学べてしまう。
この設計のうまさは、原作マンガの魅力です。
アニメ版も、その魅力を非常に高い完成度で映像化していました。
正直、『はたらく細胞』の実写化は
相当ハードルが高いと思っていました。
ところが実写版では、
俳優たちの「なりきり」が、その壁を越えてきました。
NK細胞のクールで感情を抑えた佇まい。
キラーT細胞の、どこか威圧感のある振る舞い。
画面に登場した瞬間、
「この細胞は、こういう役割だ」と伝わってくる。
俳優が演じることで、
免疫の働きが“キャラクター”ではなく、
“生きた現実の出来事”として展開されました。
このリアル感は、
実写版ならではの強みだと思います。
否:リアルすぎて「つらい」「気まずい」
ただし、このリアルさは
諸刃の剣でもありました。
芦田愛菜演じる娘・日胡の体内は、
整った環境で、細胞たちが生き生きと働いています。
見ていて安心でき、
「体内って、こんなふうに守られているんだ」と素直に楽しめる。
しかし、父・茂(阿部サダヲ)の体内に入った途端、
空気は一変します。
こちらの原作は『はたらく細胞BLACK』
過労、睡眠不足、アルコール。
不摂生の結果として描かれる体内は、
まるでブラック企業の現場です。
休む間もなく働かされ、
疲れ切って倒れていく細胞たち。
こちらも原作の世界感を忠実に再現しているのですが
その姿があまりにリアルで、
「見ているのがつらい」と感じる人が出るのも無理はありません。
アルコールの描写などは、
「子どもに見せるのが気まずい」と感じる保護者もいるでしょう。
学びになる一方で、
子どもには刺激が強すぎる。
このリアルな“わかりやすさ”そのものが、
デメリットにもなってしまうのです。
評価②『はたらく細胞』原作にはない人間パートの導入
賛:生活の結果、体内で起こることがわかる
実写版の大きな特徴が、
原作にはない人間パートの導入です。
健康に気を配る娘と、
不摂生な生活を送る父。
この対比によって、
体内で起きている出来事が
「生活の結果」として描かれます。
免疫はファンタジーではなく、
日々の選択の積み重ねで変わるもの。
体内世界と現実世界がリンクすることで、
その因果関係が、非常にわかりやすくなりました。
大人が観ると、
「これは他人事じゃない」と感じさせられます。
否:視点が多すぎて感情移入しづらい
一方で、この人間パートの追加が、
物語を複雑にしているのも事実です。
娘の体内の赤血球と白血球。
父の体内の新米赤血球。
さらに人間としての娘と父の視点。
観客は、複数の主観を
頻繁に行き来することになります。
その結果、
「誰の物語を追えばいいのか分からない」
という感覚が生まれやすい。
高校生の恋愛描写も、
物語の主軸とやや噛み合わず、
散漫な印象を与えます。
人間パートは意味のある試みでしたが、
整理しきれなかった部分によって、
感情移入がしづらくなってしまったと思います。
その点がとても残念です。
評価③ 白血病を正面から描く(実写版オリジナル)
賛:白血病のリアルを学べる
実写版『はたらく細胞』では、物語後半で、日胡が白血病になります。
これは映画オリジナルの設定で
放射線治療、骨髄移植という重いテーマも描かれます。
放射線治療によって、
排除するべきがん細胞だけでなく、
味方である免疫細胞も倒れていく。
その描写は、
決して心地よいものではありません。
正直、まさかそこまでリアルに表現するとは思いませんでした。
けれど、現実の医療がそうである以上、
避けて通れない真実でもあります。
健康が「当たり前」ではないこと。
体が奇跡的なバランスの上にあること。
この学びを、
実写版は曖昧にせず提示しました。
監督の覚悟、私はあっぱれだと思います。
否:原作ファンには「ひどい」展開
ただし、ここでもリアルさは
大きな賛否を生みます。
白血病による放射線治療の描写では、
おなじみの免疫細胞たちが次々と倒れていきます。
健康だったはずの体内が、どんどん荒廃していくのです。
ともに戦い、体を守ってきたキャラクターたちが、
容赦なく消えていく光景。
それは、あまりにも殺伐としていて、
「ひどい」「子どもにはトラウマ級」という声が出るのも理解できます。
勉強にはなる。
でも、心が追いつかない。
特に『はたらく細胞』原作ファンほど、
この展開はつらく感じるでしょう。
原作では、ピンチはあっても
仲間の細胞は死なないのですから。
私も原作が大好きなので、その気持ち、わかります。
だから、
賛否が分かれるのだと思います。
【結論】それでも実写版『はたらく細胞』が大人に刺さる理由
実写版『はたらく細胞』は、
決して万人向けの映画ではありません。
重く、つらく、
ときに「ひどい」と感じる展開もあります。
子どもに見せるには気まずい場面があるのも事実です。
だから、評価は分かれます。
ただしその賛否は、
作品の完成度よりも
「リアルに踏み込みすぎたこと」に由来していると感じます。
体の中では、
誰かが無理をし、
誰かが犠牲になっている。
健康とは、
奇跡的なバランスの上に成り立つ状態だということを、
この映画ははっきり見せてきます。
ブラックな体内環境。
治療によって消えていく味方。
救うために失われるもの。
それらを
俳優の顔と感情を通して描くからこそ、
大人には腑に落ちてしまう。
不摂生の先に何があるのか。
無理を重ねた結果、体はどうなるのか。
「仕方ない」で済ませてきた選択の行き着く先。
実写版『はたらく細胞』は、
免疫の物語であると同時に、
私たちの生き方や働き方を映す映画です。
だから評価は分かれます。
でもだからこそ、
思わず自分の体や生活を振り返った大人の心に、
静かに、長く残るのだと思います。
▶ 実写版『はたらく細胞』の中でも特に意見が割れた
「ブラック要素」について、ネタバレなしの感想を分類した記事はこちら。
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実写版『はたらく細胞』を親目線で整理したこちらの記事も参考になります。
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