映画『プラダを着た悪魔』で、誰もが一度は憤りを感じるシーンがあります。
それは、誠実なアートディレクター、ナイジェルがミランダによってチャンスを失う場面です。
なぜ彼は、あんな仕打ちを受けても、ミランダの元を去らなかったのか?
その答えは、彼の「一途な仕事愛」と、圧倒的な「美意識」に隠されていました。
ファッションを「たかが服」とバカにしていた主人公アンディを、最高に輝くミューズへと変身させたナイジェル。
彼にとってアンディをプロデュースすることは、いわば名作『マイ・フェア・レディ』のヒギンズ教授が味わったような、至高の喜びだったのかもしれません。
この記事では、アンディの変身を支えた立役者・ナイジェルが直面した出来事の背景と、彼が仕事に捧げた愛について、物語の流れに沿って深掘りします。
なお、ミランダの「裏切り」について、何が起こったのかを先に知りたい方は【ナイジェル考察③】をご覧ください。
プラダを着た悪魔【ナイジェル考察①】アンディへの怒りは仕事愛から
映画『プラダを着た悪魔』の物語の序盤、ナイジェルはアンディに非常に冷淡です。
それは彼が意地悪だからではなく、彼にとって『ランウェイ』が「希望の光」そのものだったからです。
ナイジェルは「サッカーの練習だと偽って、毛布の中で雑誌を読んでいた少年」でした。
彼にとって、ファッションを侮辱されることは、人生そのものを否定されること。
ファッション誌をバカにしていた初期のアンディに対し、
「君は努力をしていない。グチを並べているだけだ」
と突き放したのも当然です。
その言葉は、ファッション誌のプロとして、そして一人のファッション愛好家としての切実な叫びだったと思います。
プラダを着た悪魔【ナイジェル考察②】アンディは「手つかずのミューズ」だった
しかし、アンディが自分からの助言を聞き入れた瞬間、ナイジェルの態度は一変します。
彼は生き生きと、まるで魔法をかけるように彼女にハイブランドをレクチャーし始めます。
自分自身がシャネルの美を体現することはできなくても、アンディという最高の素材を通じて自分の美意識を形にする。
その過程は彼にとって、単なる「指導」を超えた、クリエイターとしての大きな喜びだったことでしょう。
私には往年の名作『マイ・フェア・レディ』のヒギンズ教授のようにも見えました。
言語学者が下町の娘を貴婦人に育て上げたように、ナイジェルは「ファッションなんて」と笑っていた無知な女を、誰もが目を奪われるミューズへと変身させたのです。
アンディが垢抜けていく様子を見るのは、ナイジェルにとっては自分の美学が現実になる、最高の瞬間だったことでしょう。
プラダを着た悪魔【ナイジェル考察③】ミランダの裏切りの理由
『プラダを着た悪魔』の物語終盤。
ナイジェルは長年夢見ていた新天地でのポジションを、発表直前に失います。
その裏には、ミランダが仕掛けた、恐ろしいほど巧妙な「二つの先手」がありました。
当時、『ランウェイ』出版元の会長は、アメリカ版に経費をかけすぎるミランダを解任し、フランス版の編集長ジャクリーヌを後釜に据えようと極秘に動いていました。
この危機を知ったミランダは、自らの地位を守るため、以下の二段階の策を講じたのです。
1. 「道連れ」による会長への脅し
ミランダは会長に対し、「もし私が辞めるなら、主要なデザイナーや有力な編集スタッフ、モデルたち全員を引き連れて去る」というリストを突きつけました。
一気に戦力を失えば、雑誌『ランウェイ』は立ち行かなくなります。ミランダは会長に、自分を「解任できない存在」として認めさせたのです。
2. ライバルへの「より魅力的なポスト」の譲渡
会長を黙らせても、自分の椅子を狙うライバル、ジャクリーヌという火種が残ります。
そこでミランダは、ジャクリーヌを納得させて追い払うために、「ジェイムズ・ホルトの新ブランド責任者」というポストを彼女に与えました。
実はこのポスト、ファッション業界では「一雑誌の編集長」よりも、ゼロからブランドを立ち上げ、世界的な巨大資本を動かすことができる、より大きな権限と将来性を持った「格上」の椅子。ジャクリーヌが飛びつくほどの魅力的な提案でした。
しかし、その椅子は、ミランダがナイジェルに「あなたの長年の功績に報いたい」と約束していたものだったのです。
ミランダにとって、ナイジェルは自分を最も理解し、かつ自分を許してくれる相手。
だからこそ、彼女は「最も信頼でき、甘えを許せる相手」を犠牲に選び、編集長としての自分の生存を優先したのです。
これは単なる裏切りではなく、孤独な王者が王座を守るための、残酷な「生存戦略」だったのです。
プラダを着た悪魔【ナイジェル考察④】裏切られても去らない理由
『プラダを着た悪魔』の物語で、まさに悪魔のようなミランダからの仕打ちを受けたとき。
彼は怒って決別することを選びませんでした。
失意の中、それでもナイジェルは「彼女は私を必要としている」
とアンディの前で微笑みます。
彼が去らなかったのは、ミランダを「ファッションの世界に貢献できる唯一無二の存在」として認め、期待しているから。
自分の夢を奪われてもなお、彼の一途な仕事愛は、自分の愛する「美の世界」そのものを守ることを選ばせたのだと思います。
彼にはファッションという「帰る場所」以外に自分を表現する場所がなく、ミランダの魔力にどっぷり浸かってもいたのでしょう。
結果的に、この裏切りは、ナイジェルではなく、アンディがミランダの元を去るきっかけになりました。
プラダを着た悪魔【ナイジェル考察⑤】アンディを忘れない美学
面白いのは、続編『プラダを着た悪魔2』で描かれる、ミランダとナイジェルのアンディに対する記憶の違いです。
合理的なミランダがアンディを「過ぎ去った一人」として忘れていても、ナイジェルは彼女を覚えていました。
当然です。
ナイジェルにとってアンディは、かつて自分の美意識を注ぎ込んだ「作品」のような存在だったのですから。
ちなみに、続編でもナイジェルの肩書は『ランウェイ』のアートディレクターのままでした。
この20年間、ミランダは新しいポストを彼に用意してあげなかったんですね。
残念なような、でも、一途にミランダを支え続ける彼にまた会えることが嬉しいような、ちょっと複雑な気持ちです。
プラダを着た悪魔【ナイジェル考察 まとめ】彼が去らない本当の理由
パリで、ナイジェルの表情が止まったあの瞬間。
目の前で、自分のチャンスが消えていった場面です。
それでも彼は、ミランダの元から去りませんでした。
『プラダを着た悪魔』の中でナイジェルが示したのは、ただの「忠誠」ではありません。
自分が選んだ場所で生き続ける、という覚悟です。
裏切られたから離れるのではなく、それでも残ると決める。
その選択は、少し苦くて、どこか切ない。
それでも彼にとっては、ファッションという世界で生きることそのものが、自分の人生でした。
だからこそ、アンディの前で見せた表情も、強がりではなく、
「それでもここにいる」という意思に見えます。
ナイジェルの視点で見返すと、あのパリのシーンも、最後のやり取りも、少し違う色で見えてくるはずです。
続編で、彼がどんな立ち位置にいるのか。
そこも大きな見どころになりそうです。
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